この記事では、既存の教育だけでなくオルタナティブな学びや新しい形の教育をご紹介します。様々な教育の選択肢をお届けしますので、ぜひご覧ください。
学校に行かない、でも「学ばない」わけじゃない家庭が学校になる時代へ

近年、「学校に合わない」「不登校になった」「もっと自由な学びをさせたい」と考える家庭が増えています。
そんな中で注目されているのが ホームスクーリング(Home Schooling)。
家庭を学びの中心にし、親や家庭教師、オンライン教材などを使って学習を進める教育スタイルです。
欧米ではすでに一般的な学習法のひとつとして認められており、近年は日本でも「新しい教育のかたち」として広がりを見せています。
この記事では、ホームスクーリングの概要から日本での現状、メリット・デメリット、そして実践方法までを詳しく解説します。
ホームスクーリングとは?その基本と背景
「ホームスクーリング」とは、子どもが学校に通わず、家庭を中心に学習を行う教育方法のことです。
親が先生となるケースもあれば、通信教育・オンライン教材・家庭教師などを組み合わせる家庭もあります。
海外ではアメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどで制度として確立しており、「家庭教育」として法的に認められています。
一方、日本では義務教育制度のもとで「学校に通うこと」が原則とされており、ホームスクーリングは法的に明確な位置づけがない“グレーゾーン”です。
それでも全国で不登校児童が30万人を超える中、「子どもに合った学び方」として家庭学習を選択する家庭は増えています。
日本におけるホームスクーリングの法的立場と現状
日本では義務教育が「学校に通う義務」ではなく、「教育を受けさせる義務」として定められています(憲法第26条・学校教育法第4条)。
そのため、ホームスクーリング自体は違法ではありません。
しかし文部科学省は「学校に籍を置きながら家庭学習をする」ことを基本としており、完全に学校に通わない形はまだ制度上整っていません。
現状としては、以下のようなケースが多いです。
- 不登校児が家庭で独自に学ぶ(家庭学習型)
- オルタナティブスクールやフリースクールと連携して学ぶ
- 海外やインターナショナルスクールのオンライン教育を受ける
文科省によると、不登校の児童生徒は年々増加しており、2024年に発表した2023年度不登校生徒数は約34万人との報告もあります。
この背景から、「ホームスクーリング」や「家庭学習型教育」を選ぶ家庭が少しずつ増えているのです。
ホームスクーリングの主なスタイル

ホームスクーリングには「家庭で教える」という共通点はありますが、実践の形は家庭ごとに異なります。
家庭主導型(ピュア・ホームスクーリング)
もっとも伝統的なスタイルで、親が教師のような役割を担う方法です。
学習内容や教材、進度、評価方法などをすべて家庭で決めます。教科書にこだわらず、生活の中で学びを見つけたり、体験学習を多く取り入れたりする家庭も多いのが特徴です。
親の教育理念を大切にしたい家庭や、子どものペースに合わせて柔軟に学ばせたい家庭に向いています。
一方で、親の時間的・精神的な負担が大きくなりやすいという面もあります。
オンライン併用型(ハイブリッド型)
最近日本で増えているのが、家庭学習とオンライン教材・通信教育を組み合わせるスタイルです。
例えば、スタディサプリやZ会、海外のオンラインスクールなどを利用して、家庭でも体系的に学べるように工夫します。親がすべてを教える必要がないため、比較的取り入れやすいのが特徴です。
テクノロジーを活用して効率よく学びたい家庭や、海外教育に興味がある家庭に適しています。
コミュニティ型(協同ホームスクーリング)
同じ価値観を持つ家庭が集まり、少人数の学習グループを作って学ぶスタイルです。
親同士が交代で教えたり、地域の専門家を招いたりして、子どもたちが一緒に活動します。
この方法は、家庭学習の自由さを保ちながらも、社会性やチームワークを育てられるというメリットがあります。
孤立しがちな家庭学習を、地域や仲間とつながる学びに発展させられるのが魅力です。
フリースクール連携型
日本では、ホームスクーリングを選ぶ家庭の中に、フリースクールと連携するケースも増えています。
フリースクールに在籍しつつ、自宅中心に学ぶことで、学びの柔軟性を保ちながら「出席扱い」にできる可能性もあります。
文部科学省も一部の条件下で、フリースクールなどでの学びを出席として認める方向を示しています。
完全なホームスクーリングに不安がある家庭にとって、学校との中間的な選択肢となります。
海外教育カリキュラム導入型(インターナショナル・ホームスクール)
近年注目を集めているのが、海外の教育プログラムを自宅で導入するスタイルです。
アメリカやイギリスのホームスクーリング教材を利用したり、英語でのオンライン授業を受けたりする家庭が増えています。
国際バカロレア(IB)やSTEM教育、探究学習など、世界基準の学びを家庭で実践できるのが大きな魅力です。
将来的に海外留学やグローバルな進路を視野に入れている家庭に向いています。
| スタイル | 概要 | 特徴 |
|---|---|---|
| 家庭主導型 | 親が中心となって 学習内容・進度を決定 | 柔軟で自由度が高い 親の負担も大きい |
| オンライン併用型 | オンライン教材や 塾・通信講座を利用 | 教育の質を確保できる 家庭の負担を軽減 |
| コミュニティ型 | 他の家庭と協力して グループ学習を行う | 社会性や協調性を 育てやすい |
| フリースクール連携型 | 登校代替として フリースクールを利用 | 出席扱いにできる 場合もある |
| 海外教育 カリキュラム導入型 | 海外のホーム スクーリング教材 を採用 | 英語教育・ 探究型教育に強い |
ホームスクーリングのメリット・デメリット
ホームスクーリングのメリット
- 子どものペースで学べる
苦手分野をじっくり、得意分野を深めるなど、柔軟な学びが可能です。 - ストレスの少ない環境で学べる
いじめや集団生活のストレスから離れて、安心して学習に集中できます。 - 親子の絆が深まる
家庭で一緒に学ぶ時間が増えることで、親子関係がより密になります。 - 個性を尊重した教育ができる
芸術、スポーツ、ITなど、子どもの興味を軸に学びを広げられます。 - 多様な教育資源が使える
オンライン教材、動画授業、海外の教育プログラムなど、自由な選択が可能です。
ホームスクーリングのデメリット
- 親の負担が大きい
教材選び、時間管理、モチベーション維持など、保護者の努力が必要です。 - 社会性の育成に課題
他の子どもと接する機会が少なく、協調性や対人スキルが育ちにくいことがあります。 - 進学ルートが限定されることも
学校に籍がない場合、内申点や出席記録が得られないため、公立高校受験が難しい場合も。 - 周囲の理解が得にくい
まだ一般的な選択ではないため、誤解や偏見を受けるケースもあります。 - 教育水準のバラつき
家庭によって学習内容や指導力に差が生まれる可能性があります。
| 観点 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 学習ペース | 子どもの成長に 合わせられる | 学習管理が 難しい場合がある |
| 環境 | 安心して学べる | 社会的交流が減る |
| 教育内容 | 興味に合わせた カリキュラム | 指導内容に 偏りが出る可能性 |
| 家庭の役割 | 親子の絆が深まる | 保護者の負担増大 |
| 将来 | 自主性・創造性が育つ | 進学制度とのギャップ |
ホームスクーリング実践のポイント(家庭での始め方)

学びの目的を明確にする
「なぜホームスクーリングを選ぶのか」を家族で共有することが最初のステップです。
子どもが学校に合わないからなのか、自主的な学びを重視したいのかによって、教材や進め方が変わります。
教材・カリキュラムを準備する
通信教育、オンライン教材、書籍教材、YouTubeなど、学びの手段は多様です。
学校の教科書を基準にする場合もあれば、探究学習を重視する家庭もあります。
行政・学校との関係を整理する
就学義務がある年齢の場合、教育委員会や在籍校とコミュニケーションを取り、家庭学習をどう扱うか確認しましょう。
一部の自治体では「出席扱い」になる例もあります。
コミュニティとのつながりを作る
同じようにホームスクーリングを行う家庭が集まるオンラインサークルや地域グループに参加することで、孤立を防ぎ、情報交換ができます。
社会体験の機会を設ける
家庭学習だけでなく、ボランティア・スポーツ・自然体験・地域活動などを通じて、社会性や協働力を育てることも大切です。
この記事のまとめ:ホームスクーリングは“逃げ”ではなく“選択”のひとつ
ホームスクーリングは、学校に行かないというよりも「家庭で学ぶ」という前向きな選択肢です。
子どもの個性やペースを尊重しながら、安心して学び続ける方法として、多くの家庭が実践を始めています。
ただし日本ではまだ法的整備が十分でないため、行政との関係や進学の道筋などは慎重に検討する必要があります。
とはいえ、テクノロジーの進化や多様な学び方の広がりによって、「家庭が学びの中心になる時代」はすでに始まっています。






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